メラニンの合成と排泄のバランスが崩れ、メラニンが過剰に蓄積しておこるのが、シミやそばかす、老人性色素斑など、いわゆる色素沈着です。
このうちそばかすは、年齢的には早い時期におこります。ふつう5~6歳ごろに始まり、主に顔や手や背中に米粒ぐらいの褐色の斑点ができます。
成長するとともに次第に増えて、思春期ごろ一番はっきりとあらわれます。しかし、もっと年をとるとだんだんぼんやりしてきます。若いうちから出てくるのは、
遺伝的な要因が大きいためだと考えられています。欧米人では金髪や碧眼の人に多いが、日本人では色の黒い人に多いそうです。
シミ(漢字では肝斑と書く)は中年過ぎの女性に多くみられますが、でき始めるのは思春期のころが多いらしいです。
妊娠とともにできる場合もあり、これは赤ちゃんを分娩すると治ってしまうことが多いですが、消えないで残る場合もあります。経口避妊薬を長く服用してもおこります。
額、鼻、まぶた、頬、あご、上唇などにできる褐色の斑点で、左右対称にできることが多い。肝斑という字は、肝臓の表面に色が似ていることによるものらしいです。
老人性色素斑はもっと年をとった人にできます。褐色あるいは黒褐色の境目のはっきりした色素斑で、大小さまざまです。顔や手の甲など日光のあたる場所によくでき、色白の人ほどできやすいといいます。
強い日光にあたると、皮膚はダメージを受けて炎症をおこす。赤くなってヒリヒリと痛みをおぼえる。紫外線は細胞や組織に被害をおこします。
そして皮膚のメラニン色素は、紫外線を吸収して体を守る役目をしていますが、強い日光に対しては量が不足で十分に守りきれません。そこで炎症がおこってしまうのです。
炎症はやがて治り、赤みがとれるとともに皮膚は黒くなってくる。つまり、皮膚はメラニンをどんどん作り出すのです。メラノサイトという細胞は大変に賢い細胞で、
こんな強い紫外線に対しては、これまでのメラニン量では不足と判断して、もっとたくさんのメラニンを作り出したのです。
日光にあたるのをやめてしばらくすると、メラニンの合成は正常に戻る。表皮細胞の中に抱えこまれた多量のメラニンはやがて垢となってはげ落ちてしまう。 そのあとには普通の量のメラニンを含む表皮ができ、肌は戻るはずです。実際、肌の大部分は元へ戻るのですが、ある部分ではいつまでも多量のメラニンを作り続けてしまう。 つまり、日焼けの色が部分的に元に戻らない。これが日焼けのあとの色素沈着なのです。
なぜこんなことがおこるのでしょうか?日焼けのあとがシミとして残りやすいのは、若い人ではなく中年過ぎの人なのです。やはりそこには老化がからんでいるに違いない。 紫外線があたると合成を活発化してメラニンを増やし、紫外線を吸収して体のダメージを防ぐのは人の持つみごとな生態防御システムです。 生態防御システムには、時に異常が発生して過剰防衛の現象がおこる。そしてこの異常のおこる率は年をとるほどに高くなる。 日焼けのあと、メラニン合成が元へ戻らなくなるのも、生態防御システムの異常による過剰防衛現象のひとつと考えられるでしょう。
紫外線や老化の他に、化粧品や日用家庭用品、植物などが原因で皮膚炎がおき、そのあとに色素沈着がおこる場合もあります。
これも刺激に対して皮膚のおこす一種の過剰防衛現象といえます。
化粧品の中に含まれているジャスミンやローズ油などの香料や、タール色素(赤色219号など)によってアレルギー性の皮膚炎をおこし、かゆみやかぶれのあとシミになったりする例も報告されています。
また、ネルのねまき、ナイロンタオル、健康タオル、マッサージ器などで長い時間皮膚を刺激しているうちに色素の沈着がおこることもありますし、漆や銀杏などでかぶれたあとにも色素沈着がおこる場合もあります。
少し変な話ですが、シミなどが深刻な問題になるのはわれわれ日本人など黄色人種だけらしいのです。黒人の場合、シミなど目立たないので問題にならないし、白人はメラニン合成力がもともと弱いので、やはりあまり問題にはならないそうなのです。